専門医によるEDコラム

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心因性?器質性?—専門医が使う見分け方と治療の順序立て

ED(勃起不全)とは?

ED(Erectile Dysfunction:勃起不全)とは、「満足のいく性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態」が持続または再発すること、と定義されています。性行為がうまくいかないと悩んでいる方は、決して少なくありません。

EDは命に関わる病気ではありませんが、パートナーとの関係や、ご自身の自信、生活の質(QOL)に深く関わってきます。もし最近、勃起力の低下を感じていたり、性行為に不安を感じていたりするなら、それはEDかもしれません。

なぜEDになるの?EDの種類を知ろう

EDの原因は大きく分けて「心因性」「器質性」「混合性」の3つがあります。ご自身のEDがどれに当てはまるのかを知ることは、適切な治療へ進むための第一歩です。

心因性ED(ストレスやプレッシャーが原因)

心因性EDは、心理的な要因が原因で起こるEDです。

  • 主な原因の例
    • 性行為での失敗体験による強い不安やプレッシャー
    • 仕事や人間関係などによる過度なストレス
    • パートナーとの関係性の悪化

比較的、朝の勃起(モーニングエディション)が見られる場合が多いのも特徴の一つです。

器質性ED(体の機能的な問題が原因)

器質性EDは、勃起に関わる血管や神経、ホルモンなどの身体の機能に問題があることで起こるEDです。

  • 主な原因の例
    • 生活習慣病:糖尿病、高血圧、脂質異常症(動脈硬化を進行させ、陰茎への血流が悪くなる)
    • 神経の障害:骨盤内の手術(前立腺がんの手術など)、脊髄の損傷
    • ホルモンの異常:テストステロン(男性ホルモン)の低下
    • 加齢による血管や勃起組織の老化

器質性EDは、心因性EDと異なり、朝の勃起も起こりにくい傾向があります。また、生活習慣病が背景にある場合、EDは全身の動脈硬化のリスクサインとして捉えられることもあります。

混合性ED(心因性と器質性の両方が関与)

最も多いのがこの混合性EDです。生活習慣病などで勃起力が少し低下したところに、「うまく勃起できなかったらどうしよう」という不安が重なり、EDが進行します。

専門医はどう見分けるの?

「自分のEDが心因性か、器質性か」を自分で判断するのは難しいものです。泌尿器科の専門医は、いくつかの情報から総合的に判断します。

詳しい問診(ヒアリング)

診察では、まず患者さんのお話を詳しく伺います。

  • 勃起ができない状況:特定のパートナーや状況でだけ起こるか?
  • 朝の勃起の有無:朝の勃起(モーニングエディション)があるか?
  • 発症のきっかけ:心当たりのあるストレスや生活の変化があったか?
  • 持病や服用中の薬:糖尿病や高血圧の有無、飲んでいる薬の種類

身体の状態のチェック

心臓病や糖尿病などの持病の有無を確認し、EDの原因となる病気が隠れていないかを調べます。

  • 血液検査:血糖値、HbA1c(糖尿病の指標)、脂質、テストステロン(男性ホルモン)などを測定し、器質性EDの原因となる病気がないかを確認します。

ED治療の順序立て(主な流れ)

EDの治療は、日本性機能学会のガイドラインに基づき、原因や重症度に合わせて段階的に進めていきます。なお、当院が行うED治療は、保険適用外の自由診療となります。

第一選択薬:PDE5阻害薬(内服薬)

現在、世界的にED治療の第一選択薬とされているのが、PDE5阻害薬と呼ばれる内服薬です。

  • 作用:PDE5という酵素の働きを抑えることで、陰茎海綿体の血管を広げ、血液を流れやすくし、勃起をサポートします。
  • 主な成分名:シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルなど
  • ポイント:これらの薬は、性的刺激があって初めて効果を発揮します。飲むだけで勃起し続けるわけではありません。
項目詳細
標準的な治療期間3ヶ月程度の内服で効果を判定することが一般的です。その後も継続して服用する方が多いです。
治療回数患者さんの希望や状態によりますが、効果発現のために複数回の服用が必要となります。

【治療薬の費用目安】

ED治療は自由診療のため、費用は全額自己負担となります。初診料・再診料のほか、薬剤費をご負担いただきます。薬剤の種類によって価格は異なります。詳しくはED治療薬と費用のページをご確認ください。

【重要なリスク・副作用・禁忌事項について】

治療薬の服用により、顔のほてり、頭痛、鼻づまりなどの副作用が出ることがあります。多くの場合、軽度で一時的です。

また、特に心臓病で硝酸薬(ニトログリセリンなど)を服用している方は、血圧が急激に下がるおそれがあるため、内服薬の投与は絶対にできません(禁忌)。他にも服用できない薬や持病がありますので、必ず医師にご相談ください。

第二選択薬:その他の治療法(薬で効果がない場合など)

PDE5阻害薬で十分な効果が得られない場合や、何らかの理由で内服薬が使えない場合は、次の治療法を検討します。

  • 陰圧式勃起補助具(ED-VACUUM):機械で陰茎を吸引し、物理的に勃起を促す方法です。
  • 陰茎注射:勃起を促す薬を直接陰茎に注射する方法です。

原因疾患の治療(器質性EDの場合)

器質性EDの場合、背景にある病気(糖尿病、高血圧など)の治療は重要です。

  • 生活習慣の改善:禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事
  • 内科での治療:糖尿病や高血圧の適切なコントロール

これらを並行して行うことが、EDの根本的な解決につながります。

カウンセリング(心因性EDの場合)

不安やストレスが主な原因となっている心因性EDに対しては、必要に応じて専門的なカウンセリングや精神科の受診をお勧めすることもあります。

泌尿器科専門医への相談が大切な理由

EDは誰にも相談しにくい悩みかもしれませんが、治療せずにいると症状が進行する可能性があります。特に、動脈硬化が背景にある器質性EDを見逃さないためにも、専門的な診断を受けることは重要です。

おかざき泌尿器科では、泌尿器科の専門医として、EDの原因を正確に見極め、患者さんの体質や生活に合わせた治療計画をご提案します。診察はプライバシーに配慮し、安心してご相談いただける環境を整えています。

「年のせいかな」と諦める前に、まずは一度、専門医にご相談ください。